更年期とは
女性は30代後半から女性ホルモン(特にエストロゲン)の量が徐々に減少していきます。
そして50歳前後(日本人女性の平均は50.5歳)で多くの方は閉経を迎えます。
この閉経を挟んだ45~55歳頃までの約10年間を一般に更年期と呼びます。
女性ホルモンの分泌量が急激に減少してくるのが更年期であり、その変化に体が対応し切れずに、様々な不調を招くようになります。
この不調症状には個人差が大きく、その程度が非常に強い方から全く感じないほど弱い方までいろいろですが、日常生活に差し支えるような症状が現れた場合を一般に更年期障害と呼んでいます。特に自律神経失調症症状が多く、いわゆる“不定愁訴”と言われます。
更年期には多種多様な不調が現れるため、別の病気が隠れていても、更年期障害の症状に違いないと思い込み、本当の疾患を見逃さないことが重要です。糖尿病、高血圧、心疾患、貧血、甲状腺疾患、悪性腫瘍、うつ病などが潜んでいる可能性もあります。
主な更年期症状
●身体症状
月経異常・体が重だるい・立ちくらみ・疲れやすい・耳鳴り・のぼせ・動悸・顔がほてり(ホットフラッシュ)・手足の痺れ・手足の冷え・乳房の痛み・大量の汗をかく・関節の痛み・体の痒み・むくみ・皮膚や目、口の乾燥・肩こり、腰痛・めまい・頭痛、頭重感・尿トラブル(頻尿、尿漏れ)・膣の萎縮・性交痛・抜け毛・薄毛 など
●心の症状
イライラ・不眠・不安・うつ・意欲の低下・もの忘れ・情動の揺れ幅が大きくなる など
セルフチェック
症状の程度をご自分で判断して点数を入れ、合計を出します。
症状の項目には複数の症状が書かれていることがありますが、その場合、どれが1つでも強いものがあったら強の点数を記入します。
強 | 中 | 弱 | 無 | |
---|---|---|---|---|
1)顔がほてる | 10 | 6 | 3 | 0 |
2)汗をかきやすい | 10 | 6 | 3 | 0 |
3)腰や手足が冷えやすい | 14 | 9 | 5 | 0 |
4)息切れ、動悸がする | 12 | 8 | 4 | 0 |
5)寝つきが悪い、または眠りが浅い | 14 | 9 | 5 | 0 |
6)怒りやすく、すぐイライラする | 12 | 8 | 4 | 0 |
7)くよくよしたり、憂うつになることがある | 7 | 5 | 3 | 0 |
8)頭痛、めまい、吐き気がよくある | 7 | 5 | 3 | 0 |
9)疲れやすい | 7 | 4 | 3 | 0 |
10)肩こり、腰痛、手足の痛みがある | 7 | 5 | 3 | 0 |
●簡易更年期指数の自己採点評価
合計点での評価です。
0~25点 | 特に問題なく更年期を過ごしています。この状態を保っていきましょう。 |
---|---|
26~50点 | 食事や運動などの生活習慣を見直すことでより快適に過ごすことができます。ただし無理をせず、楽しみながら行える範囲を心がけてください。 |
51~65点 | つらい症状を出さないためにも、婦人科受診をおすすめします。 |
66~80点 | しっかり治療を受けて、快適に暮らせるようにしていきましょう。 |
81~100点 | 更年期以外の原因がないかもきちんと調べる必要があります。できるだけ早く婦人科を受診してじっくり症状を解消していきましょう。 |
更年期とめまい・頭痛
耳鼻咽喉科でのめまい疾患の治療経験から、更年期におけるめまいとの付き合い方のアドバイスをお伝えしています。めまいと頭痛の関連性も指摘されていますので、ご心配の方はご相談ください。
更年期障害への治療
●HRT
更年期障害の主な原因が、エストロゲンの減少にあると診断された場合、少なくなったホルモンを補う治療(ホルモン補充療法;HRT:Hormone Replacement Therapy)が有効とされています。
これは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とともにプロゲステロン(黄体ホルモン)を投与し、月経があった頃のホルモン状態に近づける治療法です。エストロゲン単独では子宮体がんのリスクが上昇するため、子宮のある方には黄体ホルモンを投与することで子宮体がんのリスクを極限まで減らすことができます。当院には婦人科の設備がありませんので、がん検診等チェックは難しく、HRT療法は行っておりません。
●漢方
歴史が長い漢方薬は更年期に有効なものがいくつもあります。
ホルモンバランスをとる作用のある漢方薬当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸は三大婦人科薬と言われています。当院では、症状をお聞きし漢方処方を行っております。
●サプリメント
・エクオール
●プラセンタ注射
※保険適用ではありません。
閉経後に気を付けること
女性ホルモンには、しなやかな血管を保ち、内臓脂肪を分解しやすくし動脈硬化予防作用があります。そのため閉経により女性ホルモンの分泌が減ることにより、 脂質代謝異常(高脂血症、高コレステロール血症など)、動脈硬化の発症、骨粗鬆症の発症のリスクが高くなります。 また 粘膜の老化によるドライマウス・ドライアイ、消化器の老化による消化器の運動不良からの下痢・便秘を訴えることが多くなります。 閉経後にはこうした生活習慣病のリスクが高くなります。それまで以上に生活習慣病への意識を高く持つことが重要です。